松乃鮨の想い

暖簾を半世紀にわたり守り続けてきた三代目と、海外で経験を積んだ四代目・手塚 Yoshi。
親子でカウンターに立ち、鮨を通して日本文化とおもてなしをお届けしています。

英語でのプレゼンテーションをはじめ、ベジタリアン・コーシャ・ハラール対応、持続可能な海洋資源への配慮など、時代に沿った“開かれた鮨文化”を育んできました。

一貫の鮨に込めるのは、産地への敬意、自然への感謝、そして職人の想い。
松乃鮨は「変わらぬ伝統」と「新しい挑戦」を両輪とし、これからも鮨文化の可能性を広げていきます。

百年の歩み

松乃鮨は明治43年(1910年)、東京・芝神明(現在の浜松町付近)で屋台の鮨店として創業しました。
二代目は料亭文化が栄えた神楽坂で修行を重ね、昭和11年(1936年)、食文化が豊かだった大森海岸へと店を構えます。当時の大森は海苔やコハダ、赤貝など新鮮な海の幸に恵まれ、花街としても賑わう土地でした。松乃鮨はその地で洗練された江戸前鮨を根づかせ、地域の文化とともに発展していきます。

昭和64年(1989年)の火災で全焼したのち、三代目が再建。
祖父母の住まいであった築80年の木造日本家屋を改装し、中庭や離れ座敷を備えた数寄屋造へと生まれ変わりました。路地を抜けて奥へと続く空間や、舞の座敷など、かつての料亭文化を思わせる佇まいが今も残ります。

周囲には今も百軒を超える海苔問屋が集まり、鮨に欠かせない海の恵みが豊富だった土地の記憶が息づいています。
器や室礼の一つひとつに物語があり、松乃鮨は百年の歴史とともに、江戸前鮨の仕事を静かに受け継いでいます。